東京新聞の記事に、「売れない新刊本 図書館のせい?」と題して記事がありました。この記事によると出版社や作家らが、本の発売から1年程度、貸出をしないように図書館に求める動きがあるそうです。そうなのかな、なんか違うような、と少し違和感がありましたので、古本屋としても他人事ではないので考えてみたいと思います。
図書館の貸出状況
日本図書館協会に2014年度の図書館統計の経年変化の数字がありましたので、2004年~2014年までグラフにしてみました。
人口は減っているのに図書館数は徐々に増えているんですね。知りませんでした。個人の貸出点数は、2011年頃までは増えていますが、それ以降は鈍化しています。貸出点数はこの辺りがピークかも知れません。
出版販売額
全国出版協会のサイトから引用したグラフです。
いずれのメディアも1996年頃をピークに右肩下がりですね。1996年と比べると2013年は30%ほど減っていることがわかります。
横浜市の図書館の貸し出し状況を調べてみました
横浜市には図書館の蔵書の検索ページがあります。ここで、本のタイトルを入力することで市内各図書館の所蔵情報と予約情報がわかります。
サイト右側の検索窓に、”火花 又吉”を入力して話題の又吉 直樹著の「火花」を検索してみました。
横浜市の蔵書数は、91冊で予約待ちは3581人とわかりました。話題の本のわりには蔵書数が意外に少ないですね。予約数が3581人とは驚きです。これでは、私は待って借りることはしません。
次に、2015年2月に発売された、朝倉かすみ著「乙女の家」について検索してみると、蔵書数は、9冊で予約待ちはなくすぐ借りられる状況です。
横浜市の図書館には借りやすくするために便利なサービスがあります。ネットで予約して駅構内の行政サービスコーナ、最寄りの図書館で受け取ることができ、返却も可能です。驚いたのが現在は、一箇所のみですが、返却ポストがあり時間外でも返すことができるんですね。また、移動図書館があり、ここでも貸出、返却が可能です。借りやすい環境を整えています。
古本屋的まとめ
新刊本が売れなくなると、古本として流通する本も減ってきますので、影響があります。ただ、図書館との因果関係は調べてみましたが、あまり無いような気がしました。人気のベストセラーは確かに蔵書が多いですが、それ以上の予約があり、かなり待たされます。人気のない本は、予約も少なく直ぐ借りられる状況ですが、便利になったとはいえ図書館から本を借りて読むまでにはどうしてもタイムラグが発生します。待って本を読む層と購入して読む層は異なり、新刊本の貸出を1年行わないようにしても、新刊本の売上には関係ないのではないかと思いますね。むしろ図書館があることで読書離れが抑えられ、結果として出版業界にもプラスになっているのではと考えます。
古本屋的には、”図書館”を”古本屋”に置き換えて考えてしまいました。
「新刊本が売れないのは古本屋のせい?」
タブーですかね。